地気食企画第3弾として私たちが訪れた町は青森県十和田市です。
十和田市といえば、十和田市現代美術館や奥入瀬渓流の自然風景などが有名な場所で、台湾からも多くの人が訪れている場所です。
自然とアートが融合したこの町はとても魅力的で、私たちもまずは十和田を堪能したい。とこれらのスポットを回ってみました。
△ 十和田市現代美術館
△ 十和田市現代美術館 アート広場
△ 奥入瀬渓流館 コケ玉作り
十和田市は近年これらアートや自然豊かな街という以外に「地域ならではの食・食文化をその地域で楽しむことを目的とした旅」フードツーリズムエリアとしての取り組みに力を入れています。
そんな十和田市で有名な食といえば何と言ってもB1グランプリ受賞したB級グルメの「バラ焼き」です。街中にいくつもバラ焼きを提供するお店があり、私たちも早速食べに行きました。
甘辛いタレで玉ねぎやバラ肉を専用のコンロを焼いて食べるのですが、とてもご飯に合う!ことが判明。ついつい食べ過ぎてしまいます。
バラ焼きもいいのですが、今回地気食でフォーカスするのは郷土料理の「ひっつみ」と「ごど」です。
聞きなれないこれらの料理ですが、(日本人もおそらくほとんど知らないと思います)どんな料理か説明する前にここ十和田について簡単な食の歴史を説明する必要があるかもしれません。
昔この地域は土地が農業に適しておらず、非常に貧しい地域だったそうです。今でこそ土壌改良(土づくり)や農業技術の発展、農家さんたちの努力で全国でも有数の農産地になりましたが、当時はお米を食べることができなくて、小麦粉や豆といったもので栄養を補給していたそうです。
今回十和田奥入瀬観光機構の松尾さんのご尽力もあり、昔この辺りで作られていた小麦粉を使った料理「ひっつみ」作りを市街の居酒屋「てまり」で体験させていただきました。
「ひっつみ」の語源は青森県南部方言の「ふっつむ」から由来するもので、台湾でも同じような料理があります。台湾の場合は生地を茹でてから具材と混ぜるのに対し、ひっつみ の場合は生地を引っ張りながらそのまま温かくて野菜がたっぷり入った鍋に入れる(茹でる)のが特徴です。寒い青森ならではの身体が温まる料理です。
体験の過程で一番印象に残ったのは、生地作りの難しさでした。
△78歳で今も元気に現役のコムラさん
最初はただ単に小麦粉と水を混ぜて生地を作ればいいと思いましたが、意外にも生地のツヤと弾力が出るまで揉むのに30分以上もかかってしまい、足腰にきてしまいました!その努力の甲斐があって、出来上がったひっつみ 鍋は、鶏出汁とたっぷり野菜のエキスが小麦粉とうまく融合しとてもおいしかったです。
口に運んだ瞬間にまるで昔にフラッシュバックしたかのようにほっとするような味わいでした。
△ 粉は中力小麦粉を使用。市販のすいとん粉で作られることも
△ 具材として使うネギが太かったです!
△生地を耳たぶの柔らかさになるまでこねます
△引っ張って、ちぎった生地を鍋にそのまま入れます
△ちょうどいい薄さにひっぱるのは意外に大変です
△ 出来上がり!
そして今回最も楽しみにしていた「ごど」とご対面しました!
今日本は発酵ブームです、「味噌」や「米麹」と言ったものが有名ですが、そんな中最近日本の発酵業界でにわかに話題になっているのがこの十和田の「ごど」です。すでに発酵している納豆をさらに乳酸発酵させ、見た目はかなりグロテスクなのですが、食べてみると思っていたよりさっぱりした味わいで、むしろ納豆が苦手な人でもちょっとヨーグルト感覚で食べることができるかもしれません。
△ こちらは、納豆の形がバラバラになって、酸味もかなり効く昔ながらのごど。
△ 現代の方々も食べやすいように、納豆の形が丸ごと残しており、酸味も程よい初心者向けのごどです
もともと米の取れないこの地域では豆を主食として食べていたこともあり、各家庭では納豆を手作りしていたそうです。その時に失敗した納豆をなんとか美味しく食べようと、試行錯誤の上できた、失敗から生まれた食だったようです。ですからきちんとした作り方というものがあるわけではなく、各家庭ごとに味や見た目などは様々。今回私たちが食べたものは比較的初心者向けの「ごど」だったそうなの、次回は上級者向け?の「ごど」に挑戦してみたいと思います。
この地気食の取材を通して毎回感じることは食は本当に地域の生活に根ざして発展している。ということです。この土地の食に触れることはこの土地に文化や歴史、生活そのものに触れることです。私たちはこれからも食を通してその土地の文化や歴史、その土地そのものを体感し、皆様に共有していきたいと思います。
△ 今回お世話になった中村 陵子さん
今回の取材でもう一名お世話になった方がいらっしゃいます。十和田を中心に活躍されている野菜ソムリエの中村さんです。中村さんには上記の体験のセッティングや地元の食材を使い安全安心な食を提供している暖かい雰囲気の「ハピたのカフェ」、地元十和田で青森名産のリンゴを栽培されている上明戸さん、十和田の酒蔵「鳩政宗」さんなど十和田の食を中心とした取り組みをたくさんご案内していただきました。
この後折に触れご紹介させていただきたいと思っていますが、この場をお借りして御礼申し上げます。
△ コミュニティ機能も兼ねたハピたのカフェには地元の食材で作られた料理がたくさん。
△ 地元の酒蔵鳩政宗の杜氏 佐藤企 ( SATO TAKUMI ) さん
△ 地元りんご農家さんの上明戸さんと一緒にりんごの木の剪定作業を行いました