地気食学vol.02 |野菜を中心とした豪雪を克服する山形戸沢村の保存食文化


 時代がここまで発展し、家に入れば暖房があり、雪が積もれば除雪機で雪かきできるけれど実際雪国での生活は私達の想像以上に厳しいものです。食においては保存食を使って厳しい冬を乗り越えるのも豪雪地帯ならではの生活の知恵です。現地のお年寄りの会話でわかったのですが、保存食に向いているのは主に野菜が中心で、保存方式も塩蔵乾燥保存雪下保存の三種類に分かれています。


 

山菜は山菜そばにのせるものだけではありません。冬の生活に欠かせない貴重な栄養源

 台湾の山菜といえば山蘇 (オオタニワタリ)、川七(ムカゴ)、龍鬚菜 (シラモ)などを思い浮かべると思います。一方日本の山菜といえば多くの方がまず「山菜そばの上の山菜」を思い浮かべる人けれど、どんな種類があるのか?把握できる人は多くないかもしれません。台湾、日本に共通しているのは山に自然に育つもの、農薬を使わないものということでしょう。


 

 四季の変化の少ない台湾と違い、日本人にとって山菜は雪が解けた後に採れる「春野菜」という認識が一般的で、価値の高いものです。また最近では山菜の苦味にデトックス効果が期待出来るという説もあり、毎年春になると多くの山菜が市場に出てきます。

(近年は一部の農家さんによってハウス栽培も行われていて、春になる前に一部市場に出ているものもありますが。)また雪国に住んでいる日本人にとっては春に取れたてのものも食べる以外に保存処理をして、保存食として寒い冬を過ごすための欠かせない栄養源にもなります。


 

山菜

主に塩蔵される山菜はわらび、ぜんまい、うどなどです。(山菜のほかにも秋に採れる椎茸やなめこなどを塩蔵保存することもあるそうです)

 


 

塩蔵にとても興味が湧いたので商品を製造している「農泊の田中さんとは違う田中さん」(このあたりは田中さんという人がとても多いのです笑)に特別にお願いをして、製造の現場を見せてもらえることになりました。場所は数年前に廃校になった角川中学校の中でした。

 

塩蔵&乾燥保存についての豆知識

 

 塩蔵というのは大量の塩を保存剤代わりに使う保存法です。今回見学させてもらった工場は大きな桶の一番下に塩を敷いて、その上に春に採ったわらび、またその上に塩、わらびを・・何段か繰り返し一番上に木の蓋と重たい石で押さえつけて冬まで保存します。

次第にわらびから水分やアクが出てきます。写真のおけの周りについている灰色の物体はアクが固まった状態だそうです。

 

 

これらの山菜は田中さんたちが自分たちで採ってきたものです。さらに他の近所の方達の採ってきたものと合わせて加工して、東京の市場に出荷できる分の量を確保しています。

 

 

 工場の中にはもう一人、鈴木さんという若者がいました。彼は3年以上前に地域おこし協力隊として戸沢村にやってきてその後地元の皆様が快く受け入れてくれたこともあり、3年の協力隊としての任期を終えてもこの地域に残り、今では地元の人になくてはならない存在となっています。

 

 

塩蔵のほかに今回農泊でお世話になったおばあちゃんは自宅でぜんまいの天日干し(乾燥保存)をしていて、そのやり方を教えてくれました。

取れたぜんまいをお湯でさっと茹でて、アクを取り大量の塩をまいて両手で繊維が柔らかくなるまでよく揉んだ後、太陽の下において干して、水分を抜いて完成です。


 

 「雪下保存」 自然と共生し大地が最高の冷蔵庫になる

山形は時にはマイナス10度近くまで冷え込むこともあり、野菜を外に置いておくと凍傷でいたんでしまいます。冷蔵庫もそこまでたくさんの野菜を保存することは難しい。

そんな中、雪国ならではの知恵が自然と共生した保存方法「雪下保存」です。これは野菜が冬眠状態になるという0度前後の温度を保つために、収穫をしないでそのまま雪の下で保存する方法で、これによって野菜は生残ろうと自身から糖分を発生し一般の野菜よりより甘くて美味しい野菜が出来上がるそうです。

 

 

雪下角川蕪菁(雪下角川かぶ  YUKISHITA-TSUNOGAWA-KABU )

雪下に保存した野菜は戸沢村の方々が代々伝承した角川カブで、これは伝承野菜と言われています。(人工的な改良をせず、種を採って代々育てていける品種のことを指します)

 

今回農家民宿に宿泊した翌日の朝、私たちは雪下野菜の収穫を体験させてもらいました。

 

吹雪の中、雪に埋もれた畑に到着すると、農家民宿のご主人田中さんが除雪機を使って道を作ってくれ、畑の真ん中までなんとか入ることができました。通常だと最低2メートル以上積もるのですが、今年は幸か不幸か1メートルの雪を除雪するだけ!?で畑に入ることができました。極寒の中手袋をしてスコップを使い雪の下の角川カブを掘り出すのは言葉にできないほどの達成感でした。


角川カブは生でも食べられるのですが、その他お酢、塩、砂糖に漬けて食べることも多いです。漬けている間にカブの皮から赤い天然色素が滲み出ていくので、食べどきになると漬物全体がピンク色になりとても綺麗です。


 

ここまで読んで少しでも山菜について興味が湧きましたか?次回地方都市に訪れる機会があれば、ぜひとも様々な山菜を食べてみて大人の味を楽しんでみてくださいね。

 

達人介紹

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謝 チイ (シェ チイ)

台湾出身・野菜ソムリエ・日本在住歴14年 WEBマーケティング、日系メーカーを経験後2006年に日本へ移住。 移住後、WEBコンテンツ会社、輸入卸商社を経て2015年3月に 「日本の良いところをもっと台湾人に知ってもらいたい」という思いから食やアウトドア・カルチャーを中心とした 情報発信及び体験サービスを提供する「 Breathe TOKYO 東京深呼吸 」を設立。翌年株式会社JKL331を立ち上げ、COOとして日本と台湾におけるヒト・モノ・コトの交流ができる文化翻訳ビジネスを展開しています。

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