地気食学vol.02 |日本の田舎山形戸沢村からのご馳走

 

地気食企画の第2回に私が選んだ場所は以前から何かとご縁のある山形県戸沢村です。


戸沢村は日本でも有数の豪雪地帯で毎年2~3メートル以上も雪が積もり、非常に冬の生活が厳しい場所でもあります。今年は数十年に一度の暖冬で、あまり雪は積もっていませんでしたが、私たちが訪れた日に幸か不幸か吹雪になるほど雪がたくさん降り、なんと1日で1メートル近く雪が積もりました。

最上川の舟下りと松尾芭蕉の俳句

山形県といえば最上川舟下りを思い出す方も多いでしょう。かつて江戸時代松尾芭蕉が舟下りを体験した後に残したと言われる有名な俳句があり、これは今でも最上川周辺で目にすることができます。

五月雨をあつめて早し最上川

この俳句は「最上川が五月雨を集めたかのように急な流れである。」という 意味です。

 

山形戸沢村は南国出身者の想像を絶する豪雪地帯

 

 

里帰りするように日本の田舎でのご馳走 ( ごちそう GOCHISOU )を体験

 

近年日本では国内旅行、インバウンド問わず「農泊体験」が政府の施策として進められていて、ここ山形県戸沢村もその中で主要な場所のひとつです。

今回私たちが訪れたのは「農家民宿与惣右ェ門」さん。こちらの宿はご主人の田中さんと奥様の二人で切り盛りしている宿で、農家ならではの暮らしが体験できる素敵な場所です。

主に田舎暮らしを体験しにくる都会のお客様や修学旅行などの子供達を受け入れることが多いそうですが、最近はなんと台湾の修学旅行の子供達もたくさん受け入れているそうです。

 私がこちらを訪れたのは実は3回目ですが毎回とてもよくしていただき、ここに来ると、とても落ち着きます。(そして毎回ご飯が楽しみ!)

今回も田舎暮らしの日常の中にある非日常をたくさん体験することができたので、皆様に文章でこの後シェアします。

地方の日常こそ、最も貴重な時間

日本では台湾同様核家族化が進み、今の30-40代の家族は実家が東京や都市の人も多く、いわゆる「田舎」というものがなくなっています。農泊体験はまさに自分の田舎に家族で帰るような感覚です。

田舎に電話をかけて「明日帰るね」が予約だとすれば、電話の向こう側にいるおじいちゃんやおばあちゃんが「わかったよ。ご馳走作って待ってるね」が予約の受付と準備を始める合図みたいなものです。

馳走」とは「本来、走り回ること、奔走することを意味します。 昔は今のように食材が簡単にお店で買えるわけではなく、料理を食卓に並べる為に馬を馳せたり、自ら狩りや収穫をしたり、それこそ走り回ったそうです。 昔はこれを職業にしている人もいたそうです」

今では食事のために馬を走らせたり、狩りをしに行ったりはしないですが(笑)、ご主人の田中さんと奥様が手間と時間をかけて里帰りした子供達(私たち)のためにたくさんの心のこもった準備をしてくださいました。

決して高価な食材ではないかもしれませんが、春から漬けた山菜の漬物や、積もった雪の下から掘り出した甘いカブ、山形の郷土料理で有名な「芋煮」、天ぷら、など美味しい料理をたくさんいただき、お腹いっぱい。。と思ったら最後に朝から田中さんが準備してくれたお蕎麦まで、まさに「ご馳走」でした。

金銭の価値を超えて心通う体験

食事以外にも田中さんは私たちが来るのに合わせ雪の壁を家の前に作っていてくださり、そこに一緒にシャベルで穴を掘り、火をつけたロウソクと日本の昔話(今回は「鶴の恩返し」)をモチーフにした絵をセッテイングして、私たちだけのために雪回廊を作ってくださいました。

夕闇の中、白い雪の壁にうっすらと映し出される絵巻はとても美しく幻想的で、感動しました。

翌日の朝は雪の下カブの収穫体験でした。「今朝は吹雪の体験だ」と田中さんがおっしゃって、みんな恐る恐る雪国ならでは装備を身につけ外に出てみると、外はものすごい雪と風。まっすぐ立っていられないような吹雪でしたが、そんな中の散歩はこれはこれでとても貴重な体験で歩きながら思わず笑いが止まらなくなってしまいました。

なんとか畑に着いて雪も小降りになり、体験スタート。1メートル以上積もった雪をかき分け、雪の下に埋まっているカブをスコップで掘り出します。最初勢いよく掘っていたら、スコップでカブを傷つけてしまいました。田中さんから「ある程度掘ったら後は手で掘らなければダメだ」と教えていただき、手で丁寧に雪を掘り続けると雪の下から赤いカブを発見!宝探しみたいな体験が面白く、寒さを忘れて思わずたくさん収穫してしまいました。

 あまりの寒さに私たちが震えていたら、田中さんが蒔きストーブをつけ暖かな手作りの農機具小屋に私たちを招き入れてくれました。ほっと一息していたら、さらにその後驚きの光景が。。。何とストーブの上でいかのゲソを焼き始めたのです!これにはとてもびっくり。田中さんが「食べてみなよ」というので、食べてみたらとても美味しくて、短い時間でしたが身体も心もとても暖まりました。

 田中さんに「なぜここまで(とてもリーズナブルな価格で)やってくれるのですか?」と聞いたところ、「農泊は商売と思っているわけではなくて、奥さんといつも話していて、こんな人きたねーとか、あの時こんなことあったねーとか、人生の最後に良い思い出になればいいと決めてやっているんだー」と言っていました。この話を聞いて私は感動して涙が出そうになりました。

毎回私が訪れると、前回来た時のことをパソコンを使って記録してくれた思い出を得意そうに見せてくださったり、最近使い始めたタブレットを使ってグーグル翻訳で日本語と中国語でチャットを試したりする姿が面白くて、可愛く感じました。

 これら全ては私たちが都会では体験できない貴重な体験です。

今度は貴方も日本の田舎に帰ってみてはいかがですか?お金には変えられない貴重な時間を過ごせると思います。

 

達人介紹

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謝 チイ (シェ チイ)

台湾出身・野菜ソムリエ・日本在住歴14年 WEBマーケティング、日系メーカーを経験後2006年に日本へ移住。 移住後、WEBコンテンツ会社、輸入卸商社を経て2015年3月に 「日本の良いところをもっと台湾人に知ってもらいたい」という思いから食やアウトドア・カルチャーを中心とした 情報発信及び体験サービスを提供する「 Breathe TOKYO 東京深呼吸 」を設立。翌年株式会社JKL331を立ち上げ、COOとして日本と台湾におけるヒト・モノ・コトの交流ができる文化翻訳ビジネスを展開しています。

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