地気食学vol.01 |富士山と共に生き、うどんと糸で編み出した「山梨/富士吉田市」_吉田のうどん編(中)

 

美味しくいただきながら地元の人しかわからない「阿吽(あうん)の呼吸」を体験

 

実際にお店に入ると気がつくことなのですが、ほとんどのお店では英語のメニューの提供をしていません。これは一杯五百円以下の低単価で回転率が命である吉田のうどんのお店では観光客にあまりに長居されても効率が落ちてしまうという考えがあるからです。

地元の人たちは回転率について共有の認識を持っていて、特に人気の高いお店の混んでいる時間では、うどんが目の前に運ばれてきたら静かにいただいて、さっと外に出て次に食べたい人に席を譲ります。

このように場の空気を読むという行為は日本語で「阿吽の呼吸」といいます。私はこうやってお店のことを想って皆さんが言わなくても共通の認識のもとでとる行為がとてもいいマナーだと思いました。

次に訪れたのは2019.12月末に休業となった地元住民に「おいしすぎる吉田のうどん」と呼ばれ親しまれた「手打ちうどん しんたくうどん」でした。

一番オススメの食べ方は基本の組み合わせにかき揚げをトッピングしたもの。そしてちょっと珍しかったのは梅味の吉田のうどんでした。うどんも店内から見える富士山もとても美しく、私たちが写真撮影にちょっと時間をかけ過ぎてしまいオーナーに注意されてしましました。

豊かな出汁にボリュームのあるうどん。歯ごたえがしっかりしていて食べた後も余韻が残るような美味しいお店でしたが残念ながら(閉店してしまったので)もう食べることはできません。

 

時代の先端を走るスラッシュ文化(マルチキャリア) 江戸時代から発展した居間の空間

 

The next day, we visited the shop Genji, where most of the locals had recommended us.

翌日私たちは多くの地元の方がもっともオススメしてくれた吉田のうどん店(源氏)を訪問しました。

 

ここは朝10時半からオープンしていて、先着限定で温泉卵を無料で頂くことができます。しかし私たちが訪れた時間が遅くなって(とは言っても開店から30分なのですが・・・)しまい残念ながら間に合わず、通常の温泉卵なしの吉田のうどんを頂くことになりました。

麺の中に他であまり見たことがない「厚揚げ豆腐」が入っています。

厚揚げ豆腐が入ることによって味がさらに豊かになりまろやかに感じました。食べ終わるとお店のおばあちゃんが「お腹いっぱいになりましたか?味はどうでしたか?」と親切に声をかけてくださいました。

その他印象に残ったことは、ここ源氏は吉田のうどん店の一つの特徴である「自宅の居間を店舗として使っている」ということでした。

居間ならでは、店主のプライベートの品物などもたくさん飾ってありました。

最初の頃吉田のうどん屋に行っても自宅の居間を店舗に使っていることにについて特に何も感じなかったのですが、何軒か尋ねるうちにその共通点に気づき、吉田のうどんに詳しい日本メンバーに話を聞いてみました。

するとこれは昔からあるスラッシュ(/)青年文化(マルチキャリア)であることがわかりました。

吉田のうどんの店は江戸時代、富士信仰を代表とする富士講が発展し、富士山北麓エリアに参拝や登山の客が多く訪れるようになり、その人たちを相手に地元の人たちがお店を始めたたことが起源と言われています。


お店を始めると言っても、私たちがイメージしているような店舗スペースを見つけ、内装工事をし開店するのではなく、自宅の居間の一部を店舗として使いまっていました。また吉田のうどんは、作るのに時間と労力がかかるためお昼で営業を終了し、同じスペースが夜になると家族がご飯を食べるなど生活するスペースとなるのです。

これは台湾で自宅のスペースで食堂を運営することに近いと感じました。今では地元の方も自分でうどんを打つことは少なくなったそうです。

理由は作るのに労力がかかるのと、外でワンコインで気軽に食べられるからだとのこと。このようなことから今でもほとんどの吉田のうどんの店は同じような形式で店を営んでいます。お店に入るとなんだか日本で友人の家を訪れたようなワクワク感を感じます。

 

下の写真は前回紹介した桜井うどんの店内の様子です。

女将さんに「ここは閉店後は家族のスペースとして使っているんですか?」と聞いたところ「子供が独立してしまう前は使っていましたよ」とのことでした。

今はプライベートの空間はお客さんが入りきらない時だけ解放するそうです。

 

 

達人介紹

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謝 チイ (シェ チイ)

台湾出身・野菜ソムリエ・日本在住歴14年 WEBマーケティング、日系メーカーを経験後2006年に日本へ移住。 移住後、WEBコンテンツ会社、輸入卸商社を経て2015年3月に 「日本の良いところをもっと台湾人に知ってもらいたい」という思いから食やアウトドア・カルチャーを中心とした 情報発信及び体験サービスを提供する「 Breathe TOKYO 東京深呼吸 」を設立。翌年株式会社JKL331を立ち上げ、COOとして日本と台湾におけるヒト・モノ・コトの交流ができる文化翻訳ビジネスを展開しています。

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